コブシメ:今回の密かなターゲット

今年も、2月の遠征の時期がやってきました。

水温が下がるこの時期、我々はスピアフィッシングのために南方の海域を訪れます。

イシガキダイ、ブダイの仲間が主なターゲットになります。

しかし、今回は密かに狙っているターゲットがありました。

南方系の巨大甲イカ

コブシメ(Sepia latimanus) ※イメージ画像です。

そのターゲットとは、「コブシメ」。

日本では沖縄県などを中心とした南方海域に生息する、大型のコウイカです。

大きなコウイカと言えば本州でも獲れるモンゴウイカが有名ですが、コブシメの大きさはその比ではありません。胴の長さは50cmを超え、体重は最大で10kg以上にも成長します。

一般的なコウイカと比べれば体重で10倍以上になることもある、日本近海で獲れる最大クラスのイカと言えるでしょう。

イカ好きにはロマンしかないターゲットです。

墨の痕跡:コブシメ発見の手がかり

今回の遠征は、2泊3日。チャンスは2日間です。

密かに狙ってはいたものの、実はそこまで期待はしていませんでした。

ところが、1日目のスピアフィッシング中に、潮目で奇妙なものを発見します。

墨が漂っている

海中のど真ん中に黒い物体の断片が漂っているのを発見しました。

初めは魚の死骸かとも思いましたが、近づいてみると墨のような物質。

これは、と思い周囲を探しますが、だだっ広い海中に生命感は感じられません。

遠く続く砂地の奥、ぽっかりと浮かぶように、40cmはありそうなゴマモンガラのペアのシルエットが見えます。もしかしたら、奴らがイカかタコを襲ったのかもしれません。

ゴマモンガラ

ゴマモンガラは人間からしても怖い。 ※イメージ画像です。

ゴマモンガラは狂暴で有名な、ダイバーに恐れられるモンガラカワハギの仲間。産卵期には人にも攻撃してくるため、接近には十分注意が必要。

この海域にはタコもかなり多く、この日も大きな個体を3匹ほどは見かけていました。

タコには漁業権が設定されている場合が多い。※イメージ画像

タコはこの海域の共同漁業権対象種となっており、組合員以外は採捕できない。

しかしタコの墨はイカに比べて薄く、すぐに霧散する性質があります。つまり、長いこと形状を保って漂っていたのであれば、イカのものである可能性は高いと言えます。

しかし、初日は大きな成果も無く、坊主逃れにアオヤガラを突いて帰りました。

アオヤガラの刺し身

アオヤガラの刺し身。見た目からは想像しにくいが、透明感ある肉厚な白身で美味しい。

コブシメを発見・手銛で捕獲

2日目、イカを諦めきれずに、昨日墨を見たポイントへ。

すると、昨日と全く同じような光景が。

海中を、白い海底から海面まで、ところどころに黒い墨が漂っています。流れてきた方向を探して泳いでいると、深場に根が薄っすらと見えます。

近づいて目を凝らすと、テーブル状にせり出したサンゴの下で、ひらひらと波打つように動く生き物が見えました。間違いなく、イカです。

※イメージ画像

息を整えて垂直に潜航し、ゴムを引絞り手銛を放つと、二股の先端は眉間にせり出した兜のような甲の部分にザクリと突き刺さりました。

突然の攻撃に、コブシメは大量の墨を吐きながらジェット推進。

外れてしまわないように、相手の動きに合わせてこちらも回ります。

グルリグルリと5周ほどしながらゆっくり浮上すると、観念したのかおとなしくなりました。

捕獲したコブシメ

甲の出っ張り部分にうまく突き刺さったことで、銛先を掴んで抜けずに岸へ戻ることができた。

上陸して絞めると、高さ2mはある黒い墨の噴水を3回ほど吹き上げ、白い砂浜は吐き出された墨であたり一面真っ黒に。

6kgはある砲弾のようなコブシメが獲れました。抱える筆者と比較しても、大きさがお分かりいただけるかと思います。

これでも、最大サイズからすれば半分ほどということになりますが、そこまでいけばもはやクラーケンだ。。。

コブシメを食べる

基本的に、コウイカの仲間は寝かせたり、冷凍したりすると旨味が増して食感も柔らかくなります。

今回は移動の都合上、ひとまずその日のうちに刺し身と焼きで食べてみました。

コブシメの刺し身

コブシメの刺し身


まだ新しいので、旨味は薄いですが、サクサクと歯切れよく、これはこれで美味。

後日に寝かしたところ、そちらはねっとりもっちりとした食感になり、まさにコウイカという感じになりました。

コブシメの肝バターソテー

コブシメの肝バターソテー

ゲソや軟骨周りは肝バター醤油で炒めると最高に美味で、ビールによく合います。

火を通すとより硬さが増し、タコレベルに固くなります。小さめに切るのが良いでしょう。(今回はかなりぶつ切りに近く、食べるのも大変でした……)

コブシメとモンゴウイカ:甲の大きさ比較

コブシメは甲の大きさも規格外です。下が2kgほどのモンゴウイカ、上が今回のコブシメです。モンゴウイカとコブシメの甲

上:コブシメ 下:モンゴウイカ


モンゴウイカでもコウイカ類ではかなり大型の部類になりますが、コブシメと比べると小さく見えてしまいますね。

しかし、イカの寿命は基本的に1年と少しと言われていて、普通のコウイカも、モンゴウイカも、コブシメも実は大きさが違っても同じ1歳なのです。

ダイオウイカも1年といいますから、イカの成長スピードには驚きですね。

あと、ウエットスーツにイカ墨が染み込んだときは、必ず海できれいに洗い流してから帰るようにしましょう!激臭を放つようになります。。