泳ぎ釣りとは

「泳ぎ釣り」という釣法を聞いたことがあるだろうか。

シュノーケリング・フィッシングとも呼べるこの釣りは、ロッドとリールを持って海に入り、シュノーケルで海中を覗きながら魚を探し、見つけた瞬間に仕掛けを落とし込んで魚を釣る。シュノーケリングと釣りを組み合わせたようなスタイルだ。

今回は外洋に面した磯で、本格的な泳ぎ釣りに挑戦し、アカハタを狙った実践の記録をお届けする。

装備選びから探し方、釣れた魚をその場で締めて持ち帰るまでの一連の流れを、実際に使った道具や手順とともに詳しく解説していきたい。

フィールドと装備

今回釣行したのは外洋に面した磯場。実施したのは8月、強い日差しが照りつける暑い日だった。

磯に置かれたフロート付きの買い物かごとシュノーケルセット

フロート代わりのペットボトル付きかご

磯に運び込んだ荷物の中で目を引くのが、タックルボックスのように見える買い物かごだ。実はこれ、荷物や釣った魚を入れておくための入れ物にペットボトルを取り付けてフロート代わりにしたもの。

かご自体は水に浮かないため、ペットボトルの浮力で海面に浮かせながら引いて移動する仕組みになっている。ネット上で泳ぎ釣りをすでに実践していた先駆者の方法を参考にした。

タイコリールと短いロッドのタックル一式

100均ロッドとタイコリールの組み合わせ

タックルはかなり個性的だ。

ロッドは100均で購入した1000円のルアーロッド。今回の釣行のために新たに用意したものだ。

リールはAmazonで購入した1500円の安いタイコリールで、フライフィッシング用のリールに近い構造を持つ。海中に潜って使う以上、水没に強く、多少壊れても構わない安価なタックルであることが選定の理由だ。

実際に使ってみると、タイコリールは予想以上に良好だった。プラスチックを主体としたシンプルな構造で、使用後は分解して水洗いでき、2日連続で使用しても問題は見られなかった。

一方で仕掛けに使ったブラクリは3号と軽めだったため、自然には沈んでいかず、手で糸を送り出す必要があった。中のラチェット構造を取り除くか、もっと重い仕掛けを使っても良いかもしれない。

ロッドは取り回し重視で短いものを選んだ。柔らかかったので、水中でも魚の引きをしっかりいなしてくれて、バレることはなかった。

竿尻には穴を開けて紐を取り付けておくと便利。餌の付け替えの際などにハンズフリーでぶら下げておくことができる。

泳ぎ釣りでの釣り方

泳ぎ釣りにおける魚の探し方は非常にシンプルだ。シュノーケルをつけて海面を泳ぎながら、上から海中を目視で探していく。

シュノーケリングのイメージ画像(出典:PhotoAC)

出発したら、魚がいそうな場所を探して水面を泳いでいく。

魚が岩の隙間に逃げ込んだり、隠れていそうな岩陰や穴を見つけたら、その場所に仕掛けを落とし込む。

水中のアカハタのイメージ(出典:PhotoAC)

魚がいれば、パッと飛び出てきて、餌とにらめっこしてパクリと食いつくか、見切って戻っていく。

この、食いついてくる様子や引いている姿がはっきりと目で見える点こそ、泳ぎ釣りの一番の面白さだ。

釣り上げたアカハタのイメージ(出典:PhotoAC)

海に棲む魚を、泳いでいる所からキャッチまで、五感で楽しむことができると言える。

この日は泳いでいる最中に、大きなナンヨウブダイの群れにも遭遇した。釣ること自体はもちろん目的だが、海の中を泳ぎながら思いがけない海の生き物に出会えるのも、この釣法ならではの楽しみと言えるだろう。

その場で締める

釣れたアカハタは、磯に上がってからゆっくり処理するのではなく、波打ち際でその場すぐに締めてしまおう。

理由は鮮度維持のためだ。脳天締め、血抜き、ワタ抜きまでを海岸で一気に済ませてしまうと鮮度落ちを防げる。

磯の上でアカハタをナイフで締める様子

上陸した直後にその場で締める

アカハタのワタを抜いている手元の様子

海岸でワタ抜きまで済ませた

手順としては、まず脳天締め。ナイフをそのまま脳天に刺して仕留める。

締めた直後にエラの膜を切り、しばらく海水に浸けておくことで血抜きを行う。

そしてワタ抜きでは、お腹の部分だけウロコを落として開き、エラから内臓までまとめて取り除いてしまう。締めたらすぐに冷やすことが、鮮度を保つ上で欠かせないポイントだ。

スピアフィッシング(魚突き)と違って、魚体に穴が開かないのも、この獲り方の利点といえるだろう。

持ち帰りと調理・実食

締めて血抜き・ワタ抜きまで済ませたアカハタは、そのまま滞在していた宿へ持ち帰り、そこで仕上げの調理を行った。

アカハタは皮目が分厚く旨味があり、見た目も美しいことから、今回は皮目を炙ってから刺身に切る、いわゆる炙り仕立てにした。

実際に食べてみた感想としては、皮目はトロトロとした食感、身は柔らかいながらもしっかりとした歯ごたえがあり、炙りの香りも加わって非常に美味しかった。

海で締めてから調理までの時間が短いぶん、鮮度の良さがそのまま味に反映された一皿になったようだ。

まな板の上に置かれた一匹のアカハタ

宿で調理する前のアカハタ

皮目を炙ったアカハタの身を手に持つ様子

皮目を生かすと彩りによい


アカハタのお刺身

アカハタのお刺身

装備を整えて安全に楽しむ

今回は「ガチの泳ぎ釣り」に近いスタイルを目指したため、本来であればスピアフィッシングを行うような海域まで踏み込んで実施した。

外洋に面した磯だけに潮流はかなり強いこともあり、遊泳力を重視してミドル~ロングのフィンを使用した。

夏の海とはいえ長時間海に入っていると寒く、低体温症を防ぐためにも3mm程度以上のウェットスーツの着用をおすすめする。

また、仕掛けや道具を落としてしまう可能性もあるため、潜れるように今回はウエイトも装着した。

水中で複雑な活動をする以上、フィン・ウエイトといった潜水装備は欠かせない要素と言えるだろう。加えて、単独での実施は避け、経験者と複数人で行動する、目立つ色のフロートを携行するなど、万一の事態に備えた対策も欠かせない。

この日の釣果は、1時間ほどでアカハタ2匹。サイズは30〜38cmほどで、重さは計測していないものの、手に持った感覚としてはかなりずっしりとした釣果だった。

タックルと並べたアカハタ2匹

タックルと並べた釣果

岩の上に並んだ2匹のアカハタとメジャー

30〜38cmの釣果2匹

泳ぎ釣りの魅力

アカハタ泳ぎ釣りの一番の魅力は、本来陸上からは見えない魚の動きや躍動感が、そのまま目の前で見られることにあると感じた。

食いつきから引きのやり取りまでを水中で目視できるのは、竿を垂らして待つだけの釣りとは全く違う体験で、とても面白い。加えて、誰も竿を出していないポイントで釣りができるため、魚がスレていないというメリットもある。

また、スピアフィッシングでは狙いにくい穴の中や深場に潜む魚を、仕掛けを落とし込むことで引っ張り出せるのも大きな利点だ。

夏場は泳ぎながら釣りができるので涼しく、それ自体が楽しい時間になる。この日もナンヨウブダイの群れに出会えたように、泳ぐだけでもさまざまな発見がある。

なお、別日にはアカハタだけでなくカサゴが釣れた。メインターゲットになる根魚類については、狙える魚種の幅も決して狭くはないと思われる。

装備さえ整えれば、暑い季節の新しい釣りの選択肢として、挑戦してみる価値のあるスタイルだろう。是非夏の海で試してみてほしい。