ハコフグの『かっとっぽ』とは
今回ご紹介するのは、長崎・五島地方に伝わる郷土料理「かっとっぽ」です。
ハコフグの肝に味噌や薬味を混ぜ込み、外骨格をそのまま器にして焼き上げる料理で、お酒好きにはたまらない一品といえます。
ただ、今はハコフグの肝を使った本物の「かっとっぽ」を飲食店で提供することは禁止されていて、いわば「禁断の料理」のような立ち位置になっています。
自分で獲って、自己責任の元で自分で作ることでしか、本物を食べることはできないと言えます。
今回使ったハコフグは、8月頃に素潜りで捕獲したものです。

素潜りで捕獲したハコフグ3匹
ハコフグは銛で突いて獲ることもできますが、今回は潜っていた場所の規制の関係で網を選びました。
ハコフグは動きがゆっくりなので、頑張れば網でも十分捕獲できる魚です。(捕獲する際は、事前にその海域の漁業調整規則や遊漁規則、保護区の指定状況を必ず確認してください。)
ハコフグの毒について知っておくべきこと

ハコフグ(出典:PhotoAC)
ハコフグを購入したり提供するには「ふぐ調理師」の免許が必要とされています。
しかし、表面から分泌される粘液等にはパフトキシンという毒が含まれるとされています。(ハコフグを他の魚と一緒にバケツに入れておくと全滅したりします。)
それ以外の部位には基本的に毒がないとされてきました。こうした郷土料理が存在するのもそのためと思われます。
ただ、中毒例が全くないわけではなく、パリトキシン様毒による事例が報告されています。パリトキシンは最悪の場合死に至ることもある猛毒で、注意が必要です。パリトキシンのもとになるのは渦鞭毛藻類や、それと共生するイワスナギンチャクなどとされています。これはあくまで私の持論ですが、餌となるこれらの生物が多い南方の海域ではより注意が必要ではないかと考えています(今回の捕獲海域が安全であると断定するものではありません)。

ハコフグ(出典:PhotoAC)
近年は温暖化も進んでいますから、生息域や毒性のリスクも変化しているかもしれません。
今回は、当該海域で獲れたハコフグに毒の報告がないこと、そして自分自身がこれまで食べてきて問題がなかったことなどから総合して、自己責任での喫食を行いました。
ただし、過去に問題がなかったことは今後の安全を保証するものではなく、個体差や季節、その年の海況によって毒性が変化する可能性があるのは当然です。
自然で採取した食材全般について言えることですが、喫食する場合には情報を収集した上で、自己責任で活動するようにしましょう。
下処理の手順
まずハサミを使って皮を切り開きます。
かっとっぽではハコフグの外骨格をそのまま容器として使うので、肛門からキッチンバサミを入れて、お腹側をチョキチョキと開けていきます。ここが少し力を使う工程です。

腹側をハサミで開く
開いたら内臓を取り出します。

内臓を取り出す工程
取り出した後は、血合いや内臓を流水できれいに洗います。

洗い終えたら、目的の肝を取り出します。ハコフグの肝はこの後の味噌ダネの主役になる部分です。

取り出した肝
味噌ダネ作り
取り出した肝をフードプロセッサーに入れます。

ここにネギなどの薬味を加えます。

ネギとミソをたっぷり入れる

ペースト状に混ぜ合わせる
目分量で肝とネギ、味噌を一緒に混ぜ合わせて味噌ダネを作ります。包丁で叩いてペースト状にすることもあります。
詰めて焼く
ハコフグの中に、作った味噌ダネを詰めていきます。

ハコフグの甲羅 中には身が入っている。

できあがった味噌ダネをハコフグに入れる
詰め終えたら焼きに入ります。今回は魚焼きグリルを使いましたが、いつもは炭火で焼くことが多いです。

焼く前のかっとっぽ
火加減のポイントは、しっかり水分を飛ばすことです。
生っぽさを残さないよう、焦げ目がしっかりつくまで火を入れています。

ハコフグの肝はかなり油分が多く、しっかり火を入れることで味噌やネギがその脂で揚がるような状態になります。
この過程で独特の香ばしい風味が生まれるので、焦げを恐れずに火を入れきることが「かっとっぽ」をおいしく仕上げるコツだと思います。

焦げ目がつくまで火を入れる
実食レポート
焼き上がったかっとっぽを皿に盛り付けます。しっかり焦げ目がついた甲羅から、肝と味噌が香ばしい匂いを放っています。

完成したかっとっぽ
ハコフグの肝は油分が多く、冷やすとバターのように固まるほどです。しっかり火を入れたことで、味噌やネギがその脂で揚げられたような状態になり、独特の香ばしい風味が生まれています。


尻尾を引っ張ると、立派な身が出てきた
お酒がどんどん進んで、ハコフグはあっという間に空っぽに。禁断のハコフグ料理ですが、味は間違いありません。
ハコフグの「かっとっぽ」という郷土料理は、ビジュアル・味・香りどれをとっても、素晴らしい食文化であると思います。研究が進み、安全に食べられるようになる日が来ることを願うばかりです。





